金曜日は粋な姐さん二人を連れて寄席に行った。
この日のお目当ては柳家権太楼。
落語界きっての爆笑派だ。
亡くなった桂枝雀を彷彿とさせる。
権太楼師匠はいいねぇ。
この日は「豪華客船で行く世界一周旅行に招かれて一席やった」って話。
これって単なる仕事の話じゃん。でも、権太楼さんがやるとちゃんと落語になるから凄い。
枕で大先輩の入船亭扇橋さんをいじったり、途中でちょっとした時事ネタを入れたり、
相変わらず達者である。
扇橋さんは今年七十八歳。
実はこの日、権太楼さんの前に『茄子娘』をやった(たぶん)のだが、声が小さいし、口がモゴモゴしていて、何をいってるのかさっぱり判らない。
そんなわけで客席は一斉に船を漕ぎはじめたのだ。まるで幼稚園のお昼寝タイムだ。
それまではいい感じで温まっていた客席が、扇橋さんのあとは冷蔵庫のように冷えきってしまった。その会場を再び爆笑の渦に巻き込むのだから権太楼さんは凄い。
そんでもって「だいたいお客さんも扇橋さんの話で笑おうなんって了見は捨てたほうがいいですよ。動いている扇橋さんを見られることが幸せなんですから…」と先輩のフォローまでする。
しかも、その言い方がちっとも嫌みじゃなくて、愛情に満ちている。
場内が「しゃーないなぁ…」というあたたかい笑いに包まれる。
当意即妙とは権太楼さんのためにある言葉なんだろうなぁ。
いま、いちばん勢いのある噺家のひとりだな。
今度は独演会を聴いてみたい。