早朝の新幹線で北へ向かった。
東北の沼に咲く、見渡す限りの蓮を愛でるために…。
沼の広さは東京ドーム60個分もあるという。
その広い沼に船を出し、蓮の花咲く極楽浄土で遊ぶのだ。
この日、沼の気温は23℃。
下界の灼熱地獄を思うと、これだけでもすでに極楽だ。
水面を覆う蓮が放つ大量の酸素が、霧雨に冷やされて呼吸が楽だ。
HGB不足の肉体が、みるみる癒されていくのがわかる。
極楽浄土で人は苦しみから解放されるのだ。
船は細い水路を、蓮をかき分けるようにして進む。
ずる賢そうな顔をしたサギが蓮の葉の上で羽を休め、
無数のツバメが船のまわりを飛び交い、虫を食む。
蓮は午後には花を閉じる。
ボクらは僅かな時間を惜しむように3回船を出した。
花の命は短くて、咲き始めてから4日目の午前中にすべて散る。
咲くのは早朝。
いつか花が開く時のポンという音を聞いてみたい。