東京ベランダ通信

noveranda.exblog.jp
ブログトップ
2008年 05月 01日

ボクらのベランダ物語 その1

[人はベランダに暮らす]

 ここは渋谷の高台にある古いマンション。建てられたのは東京オリンピックの前年というから今年で築45年にもなる。ネットの住宅情報サイトには“ヴィンテージ・マンション”と書かれていたが、そんな洒落た物件ではない。エレベーターは遅いし、給水管の老朽化も著しく、トイレの水洗は1度流すと、たまるまでに5分もかかる。
 
 引っ越してきて今年で5年。なんでこんな古いマンションに越してきたかというと、渋谷とは思えないほど、周囲に緑が多かったこと。そして、なによりもベランダが広かったからだ。
 ボクは北海道の田舎生まれである。子供の頃から自然の中で育ってきたので、コンクリートのハコに閉じこめられたようなマンション暮らしには耐えられない。上京してからこれまでに何度も引っ越しを繰り返してるけど、長く住んだのは庭のある部屋や、公園に隣接した部屋ばかりだ。
 ここに引っ越す前の家にも小さな庭があり、そばには桜のきれいな遊歩道があって、散歩するにも、植物を育てるにもうってつけの環境だった。ただ、ひとつだけ問題があった。そこは高圧の送電線と環状七号線に挟まれたデンジャラスゾーンだったのだ。引っ越した当初はまったく気にしていなかったが、8年暮らしたら体を壊した。因果関係は不明だが、電磁波と排ガスにやられたと感じた。それで都心の割には環境の良かったこの場所に、転地療養(?)のため引っ越したというわけだ。

 引っ越しで部屋の広さは以前の半分になった。でも、庭(ベランダ)は倍以上の広さがある。ちなみに、部屋は60㎡で、ベランダは70㎡だ。広い部屋はお金を出せばいくらでもあるが、広いベランダのある部屋となると、なかなか見つからない。しかも、この部屋は高台のマンションの最上階なので、眺めがよろしい。晴れていれば羽田空港を離発着する飛行機が見えるし、夏は東京湾の花火も見える。
f0160063_7252868.jpg
 実は引っ越した日が、偶然、東京湾の花火大会だった。夜、オクさんとベランダで窓拭きをしていたら、突然、南東の空に花火があがった。前の住人も、マンションの管理人も、このマンションからは花火は見えないといっていたので、予想外だった。ボクらは雑巾を握ったまま、時間を忘れて遠くの花火を眺めた。きれいだった。遅れて聞こえる音も優しく感じた。ボクらはこの時「このベランダは、ボクらにとってかけがえのない場所になる!」と直感した。

 天からの授かり物のようなベランダが愛おしかった。毎年、二人でこのベランダから花火を見たいと思った。果樹を育て、野菜を植え、ベランダを緑でいっぱいにしようと思った。人はハコに暮らすのではなく「人は庭園に暮らす」と考えたのは、江戸時代の作庭家・小堀遠州だが、これを現代の都市生活者に置き換えれば「人はベランダに暮らす」となるだろう。ベランダはボクらに幸福をもたらす暮らしの舞台装置だ。ボクらはこのベランダを生活の中心として暮らすことをこの時、決意したのだ。
[PR]

by novou | 2008-05-01 21:50 | ボクらのベランダ物語 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://noveranda.exblog.jp/tb/7931297
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
名前
URL
画像認証
削除用パスワード


<< ネギの丸焼き      代官山アパートメントのこと >>