6月1日の朝、ピンポンピンポンピンポンとせわしなくチャイムがなって、ハハがやってきた。
「ノブヤ〜、あんたこれ好きでしょ。お母さん忘れてたけど、ほれ、誕生日おめでとう!」
と、ボクにコンビニ袋を差し出した。
のぞくとなかにアイスクリームがどっさりあった。
たぶん10個以上はあるだろう。
となりのローソンで買ってきたらしい。
「あ、ありがとう。でもうちの冷凍庫にはこんなに入らないから、お母さんの冷凍庫に入れといて」
「そうかい。じゃあ、入れとくからいつでも食べにおいで…」
と、コンビニ袋を持ってそそくさと帰っていった。
ボクの誕生日は5月29日だ。
一人息子の誕生日を忘れるってのもどうかと思うが、
プレゼントにコンビニアイス10個って嫌がらせか?
「あんたこれ好きでしょ」って、確かに子どものころはよく食べたけど、
大人になってからは、ほとんど食べたことはない。
去年も一昨年も誕生日プレゼントは花束だった。
しかも、それは必ず当日の朝に、ハハの満面の笑顔つきでボクに手渡された。
照れ臭かったが嬉しかった。
ハハはことし87歳だ。
息子の誕生日を記憶する力も、花束を買いに行く気力も、もうなくなってしまったのか。
それとも子どものころみたいに、ボクと一緒にアイスを食べたかったんだろうか?
それならちょっと嬉しいけど…。
一度、ハハの部屋で一緒にアイスを食べてみようかな。
昔話でもしながらさ…。
アイスは井山三希子さんのカップに入れ、須田二郎さんの鍋敷きにおいて、ちょっとおしゃれに撮ってみました。
コンビニアイスには見えんでしょ(笑)。