わが家のダイニングの飾り棚には、薩摩錫(さつますず)の大きな茶壺が3つ並んでいます。
これは25年ほど前に骨董市で見つけ、値切りに値切って連れ帰ったわが家のお宝です。
この茶壺にはほうじ茶と阿波番茶と炒り番茶が入っています。
また、飾り棚の上段にはガラス瓶があって、こちらにはレモングラスが入っています。
これは秋に収穫したレモングラスを乾燥させ、ハーブティー用に細かく刻んだものです。
朝、起きるとオクさんはその日の気分や体調で、茶壺や瓶の中から好みの茶葉をとり出し、大きなガラスポットで沸かします。
茶葉はガラスポットの中でくるくる踊り、湯気が朝の光に照らされてゆらゆら揺れます。
オクさんはこの光景を眺めるのが好きで、朝、台所に立つのが楽しくなるといいます。
薩摩錫の茶壺は機密性がすばらしく、蓋をする時、自重ですぅ〜っと落ちてゆきます。
ボクはスローモーションのように閉まっていく蓋の動きを見るのが好きで、茶葉をとり出すたびに昔の錫職人の技術の高さに感心させられるのです。
さて、お茶が沸くとそれはガラスポットのまま、どんとテーブルに置かれます。
このお茶は朝食のためのお茶ではなく、ボクたち夫婦が水代わりに一日かけていただくお茶なのです。
お茶の準備が終わると今度は朝食の支度。
わが家の朝食はたいていがイギリスパンのトーストとベーコンエッグです。
オクさんが朝食の支度をしている間に、ボクは朝のお茶の準備をします。
朝のお茶はたいていがミルクティーかミルクコーヒーです。
ミルクは沸騰させないように中火でゆっくり温めます。
紅茶はポットとカップを暖め、注ぐお湯は茶葉にあった温度で…、そしてコーヒーの時は挽きたての豆をハンドドリップで丁寧に淹れます。
お茶が入ったところで、食卓にはトーストとベーコンエッグが並びます。
朝食は一日の始まりに夫婦が心を合わせる儀式のようなものです。
心を合わせれば、食卓には焼き立てのパン、淹れ立てのお茶、そして出来立てのベーコンエッグが最高のタイミングで並ぶのです。
我が家ではこれを“朝の三立て”と呼んでいます(笑)。
朝の儀式がうまくいくと、なんだか一日が気分よくスタートできるのです。
そして、お茶時間は生活の句読点。ニュートラルな自分を取り戻すための大切な時間です。
20日発売の&Premium(マガジンハウス)4月号に、わが家のお茶時間とお茶にあうお菓子が掲載されました。
どうぞおいしいお茶でも飲みながら、ページをめくってみてください。